2012年3月 9日

墨場必携:漢詩 春雨到筆庵

    
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  「春雨到筆庵(しゆんう ひつあんにいたる)」   廣瀬旭荘(ひろせきよくさう)

     菘圃蔥畦取路斜
     桃花多處是君家
     晩來何者敲門至
     雨與詩人與落花

      菘圃(しゆうほ)葱畦(そうけい)
               路(みち)を取ること斜(ななめ)に
      桃花多き処是(こ)れ君が家
      晩来(ばんらい)何者ぞ門を敲(たた)き至るは
      雨と詩人と落花となり

    筆庵:この時の訪問先。第二句にある「君家」を指すと思われるが未詳。
    菘圃:菘(とうな)の圃(たはけ)。
       菘(とうな)は唐菜、冬菜、またインゲンナとも呼ばれる野菜。
    葱畦:葱(ねぎ)の畦(うね)、ネギ畑。
    取路斜:斜めに辿る路。
       「菘圃蔥畦取路斜」は菘圃葱畦の中の斜めに行く路
    晩来:夕暮れ時。
    雨與詩人與落花:この時に「門を敲(たた)き至る」ものを挙げている。
       春雨が降り、桃の花が散る中を詩人が訪問したのであろうから、
       「君家」に「至」っているのは三者すべてといえるが、敢えて
       その内の誰が客かと尋ねる趣きの詩と見て、訳詩は意を鮮明にする
       めに、助詞を「と」ではなく「か」に替えた。
       ちなみに「門を敲(たた)き至る」のはもちろん詩人、作者自身である。
       蛇足ながら、「敲(たたく)」は音を伴う動作。春雨は静かに降るもの、
       花の散るのにも音は無い。


      
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                                          24.3.6 東京都清瀬市

     菘(とうな)の圃(たはけ)、葱(ねぎ)の畦(うね)の中の
                              斜めに行く路
     桃の花がいっぱいに咲いている処(ところ)が君の家
     夕暮れ時に門を敲いて訪ねてくるのは誰
     雨か詩人か散る花のどれか

      
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                                          24.3.8 東京都清瀬市




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