2012年2月24日

墨場必携:漢詩 初春雨中作


    
0212ジョウビタキ2333.jpg                                           24.2.12 東京都清瀬市

  「初春雨中作」    廣瀬淡窗

     鳥未遷喬花未開
     牆陰殘雪尚成堆
     誰知東帝回春處
     却自空濛蕭瑟來

      鳥は未(いま)だ喬(たか)きに遷(うつ)らず
                        花は未(いま)だ開かず
      牆陰(しやういん)の残雪 尚ほ堆(たい)を成す
      誰か知らん 東帝回春の処(ところ)は
      却つて空濛(くうまう)蕭瑟(せうしつ)より来たるを

     遷喬:冬の間深い谷にひそんでいた鳥が谷より出て高い木に遷る。
        「出自幽谷、遷于喬木」『詩経』小雅
     花:ここでは春の様々な花を総称していると解釈されるが、もちろん
       桜と見ても通じる。
     誰知:反語となって文意を強める。
        ここでは、東帝が春を回らせてくるのがいかにも春を思わせる
        明るい晴れやかな処からではなく、却ってぼんやりした温かい
        雨のしめやかな気配の中からであることを強調する。
     東帝:「東」は春の方位。東帝は春を司る神。東皇に同じ。
     回春:季節がめぐって春になる。
     空濛:霧雨に煙るさま。
     蕭瑟:「蕭」はひっそりとものさびしいさま。
        「瑟」は楽器名。大琴(おおごと)。その音色の気配から、
         おごそかなさま、静かなさま、清らかなさま。
        「蕭瑟」で、ものさびしいさま、ひっそりしめやかなさま。


     
    
0212カシラダカ2260.jpg                                            24.2.12 東京都清瀬市

     鳥はまだ喬い木に遷らず花もまだ咲かない
     牆(かきね)の陰の残雪はまだ堆(うずたか)く積もったまま
     東帝はけぶる霧雨のしめやかな気配の中から
                      春を回(めぐ)らせて来るのである

    
0224小ガモ3028.jpg                                              24.2.24 狭山湖


同じカテゴリの記事一覧