2011年4月 2日

墨場必携:漢詩 花宴

   
    4染井吉野4042.jpg                               23.4.4 東京都清瀬市
  

   「神泉苑花宴賦落花篇」
   (神泉苑の花宴にして「落花篇」を賦す)
                     嵯峨天皇  
    過半靑春何處催
    和風數重百花開
    芳菲歇盡無由駐
    爰唱文雄賞宴來
    見取花光林表出
    造化寧假丹靑筆
    紅英落處鶯亂鳴
    紫萼散時蝶群驚
    借問濃香何獨飛
    飛來滿坐堪襲衣

      過半(くわはん)の青春(せいしゆん) 何の催ほす所ぞ
      和風数(しばしば)重(しき)りて 百花(ひやくくわ)開く。
      芳菲(はうひ)歇盡(けつじん)するに
                   駐(とど)むるに由(よし)無し
      爰(ここ)に文雄(ぶんゆう)を唱(よば)ひて
                   賞宴(しやうえん)に来たる
      見取(けんしゆ)す
          花光(くわくわう)林表(りんぺう)に出づることを、
      造化(ざうくわ)
          寧(なに)ぞ仮(か)らん丹靑(たんせい)の筆
      紅英(こうえい)落つる処 鶯(うぐひす)乱れて鳴き、
      紫萼(しがく)散る時、蝶(てふ)群れて驚く、
      借問(しやもん)す 
        濃香(のうかう)何(いづこ)より独(ひと)り飛ぶかと、
      飛び来たりて坐(ざ)に満ち 衣に襲(つ)くことに堪へたり。

   7桜4071.jpg                               23.4.7 東京都清瀬市

  春も半ばを過ぎた頃、何がものをせきたてるのか、
  やわらかな風がしきりに吹いて、
           あまたの花がものにせかされるように咲くことである。
  芳しい花の香りは失せようとして、止めることはできない。
  そこで、文雅の友に呼びかけて、
    (優れた詩人である人びとは)花を愛でるこの宴にやって来たのである。
  花園に入ると、輝く花の光が林の外にまで溢れているのがはっきりとわかる。
  造化の神の造りなしたもうこの美しさは、
              人工の赤青の絵の具の筆を借りる必要があろうか。
  紅色の花房の散り落ちるあたりに鶯は入り乱れて鳴き、
  花が散り、紫色の萼(がく)が落ると、舞い飛ぶ蝶の群ははっと驚いて揺らぐ。
  お尋ねする、よい香を放つこの花はどこから飛んできたのか。
  それは飛来して、宴席に満ち、人びとの衣にしきりにまつわりつく。
  
     1桜41.jpg                               23.4.1 東京都清瀬

同じカテゴリの記事一覧