2011年3月31日

墨場必携:漢詩 桜花賦

   
31桜開花331.jpg                                         23.3.31 東京都清瀬市
  

   桜花賦
                       平城天皇  
    昔在幽岩下
    光華照四方
    忽逢攀折客
    含笑亘三陽
    送気時多少
    垂陰復短長
    如何此一物
    擅美九春場

      昔在り 幽岩(いうがん)の下(もと)
      光華(くわうくわ) 四方(よも)を照らす
      忽ちに 攀折(はんせつ)の客に逢ひ
      笑(えみ)を含(ふく)みて 三陽を亘る
      氣を送る 時(よりより)に多少(たせう)
      陰(かげ)を垂る 復(ま)た短長(たんちやう)
      如何(いか)なるぞ 此の一物(いちぶつ)の
      美を九春(きうしゆん)の場(には)に
                 擅(ほしきまま)にすることは

   
31桜開花3312.jpg                                         23.3.31 東京都清瀬市

     ※攀折:枝を引き撓めて折ること。「攀折客」はそのようにする人
        「忽逢攀折客」は、宮仕え人によって桜が移植されたことを表す。
     ※三陽:春の三箇月(一、二、三月)。
     ※九春:春三箇月、九十日の春の意。

   
31桜3314.jpg                                        23.3.31 東京都清瀬市

       昔奥まった静かな巌のもとにあった桜、
       その光り輝く美しさは広い世界を照らしていた。
       たまたま宮人に手折られ、移植されて
       都の庭に咲き栄えて陽春の時を亘っている。
       香気を送ってくること、ある時多く、ある時少なく
       花影を地に投げかけること、ある時長く、ある時短い。
       どうしてだろう、数々ある春のひとつのものである桜が、
       美を春の場(にわ)にほしいままにするのは。

   
31桜3315.jpg                                        23.3.31 東京都清瀬市


同じカテゴリの記事一覧