2011年3月19日

墨場必携:漢詩 留別

    
19エナガ319.jpg                                     エナガ 23.3.19 東京都清瀬市
  

 留別靑龍寺義操阿闍梨[青龍寺の義操阿闍梨に留別(りうべつ)す]
                       空海「経国集」巻十梵門  


    同法同門喜偶深
    遊空白霧忽歸岑
    一生一別難再見
    非夢思中數數尋

     同法同門(どうはふどうもん) 偶(あ)ふを喜ぶこと深し
     空に遊ぶ白霧(はくむ) 忽(たちまち)ち岑(みね)に帰る
     一生 一たび別るれば 再(ふたた)びは見(あ)ひ難し
     夢に非(あら)ず 思中(しちゆう)に数々(しばしば)尋ねん 

    
19エナガ3192.jpg                                      エナガ 23.3.19 東京都清瀬市

     ※留別:旅立つ人が見送る人に別れの気持ちを込めて詩を贈ること。
     ※青龍寺:長安城東南、新昌坊にあった寺。隋代に霊感寺として創建され、
          8世紀になって青龍寺と改まった。
          空海はここで修行し、恵果阿闍梨から密教の秘法を授かった。
     ※義操阿闍梨:詳細不明。
            小島憲之氏は、王維作「夏日 青龍寺に過ぎり、
            操禅師に謁す」詩の題にある操禅師のことと推定。
            王維の詩は空海入唐の半世紀以上前に作られている
            (天宝末年742〜746の間)。
            空海が生きている操禅師を知っていた可能性は低いか。

    
19蕾319.jpg                                         23.3.19 東京都清瀬市

       同じ仏門の友としてあなたにお会いできたことを
                      本当に嬉しく思います。
       空に漂う白い霧がにわかに山に帰ってゆくように
                      私は故国に帰ります。
       この一生、ひとたびお別れすれば、
           もう二度とはお目にかかることはできないでしょう。
       こののちは、夢の中ではなく、心の中で、
                しばしばあなたをお尋ねするでしょう。

    
24花桃桃3242.jpg                                      花桃 23.3.24 東京都清瀬市


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