2011年1月14日

墨場必携:漢文 「弁山水対策」


      

12調節池.jpg                                    23.1.12 東京都清瀬市金山調節池

『和漢朗詠集』504〜506は作者大江澄明「弁山水対策(山水を弁ずる対策)」

   草木扶疎 春風梳山祇之髪 
   魚鼈遊戯 秋水宇河伯之民
                     『和漢朗詠集』504
   ※山祇:山の神
    河伯:川の神
     草木(さうもく)扶疎(ふそ)たり。
     春の風山祇(さんき)の髪を梳(けづ)る。
     魚鼈(ぎよべつ)遊戯(いうぎ)す。
     秋の水河伯(かはく)の民を宇(やしな)ふ。

     草木が風にそよいでいる。
     春風が山姫の髪を梳(くしけず)っているのだ。
     魚や亀がのどかに遊んでいる。
     秋の水が川の神の民を養っているのだ。

   ※『呂史春秋』に「霊山は石を身とし草木を髪とす。河伯は水を国とし、
    魚鼈を民とす」による。

      
12寒梅4.jpg                                          23.1.1 東京都清瀬市
    
   韓康独往之栖 花薬如旧
   范蠡扁舟之泊 煙波惟新
                     『和漢朗詠集』505
 ※韓康:仙術を得て名山に薬草を採り市に出て売ったという(『後漢書』逸民)。
  范蠡:越王勾践に仕えた後、小舟を浮かべて五湖に去り、陶朱公になったという。

     韓康(かんかう)独往(とくわう)の栖(すみか)。
     花薬(くわやく)旧(ふる)きがごとし。
     范蠡(はんれい)扁舟(へんしう)の泊(とまり)。
     煙波(えんぱ)惟(こ)れ新たなり。

     韓康は独り山に棲んで薬を採ったという。
     今はその跡もないが、薬草は昔に変わらず生えている。
     范蠡は小舟に乗って五湖に浮かんだという。
     今はその泊まりも定かではないが、細かな波はいつも新たに見える。

      
9金山調節池.jpg                                     23.1.9 東京都清瀬市金山調節池

   山復山 何工削成青巌之形
   水復水 誰家染出碧澗之色
                     『和漢朗詠集』506

     山復(ま)た山。何(いづ)れの工(たくみ)か青巌(せいがん)の
     形を削(けづ)り成(な)せる。
     水復(ま)た水。誰(た)れが家にか碧澗(へきかん)の色(いろ)を
     染め出(い)だせる。

     山々が重なり連なって、青々と岩の嶺がそびえている。あの山の姿は
     どのような名工が削って造りだしたのだろう。
     深く湛えられた水が、碧に澄んだ淵をなしている。この色はどのような
     優れた染色家が染め出したのだろう。

      
11狭山湖.jpg                                       23.1.11 埼玉県所沢市狭山湖

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