墨場必携:漢文 「弁山水対策」
23.1.12 東京都清瀬市金山調節池
『和漢朗詠集』504〜506は作者大江澄明「弁山水対策(山水を弁ずる対策)」
草木扶疎 春風梳山祇之髪
魚鼈遊戯 秋水宇河伯之民
『和漢朗詠集』504
※山祇:山の神
河伯:川の神
草木(さうもく)扶疎(ふそ)たり。
春の風山祇(さんき)の髪を梳(けづ)る。
魚鼈(ぎよべつ)遊戯(いうぎ)す。
秋の水河伯(かはく)の民を宇(やしな)ふ。
草木が風にそよいでいる。
春風が山姫の髪を梳(くしけず)っているのだ。
魚や亀がのどかに遊んでいる。
秋の水が川の神の民を養っているのだ。
※『呂史春秋』に「霊山は石を身とし草木を髪とす。河伯は水を国とし、
魚鼈を民とす」による。
23.1.1 東京都清瀬市
韓康独往之栖 花薬如旧
范蠡扁舟之泊 煙波惟新
『和漢朗詠集』505
※韓康:仙術を得て名山に薬草を採り市に出て売ったという(『後漢書』逸民)。
范蠡:越王勾践に仕えた後、小舟を浮かべて五湖に去り、陶朱公になったという。
韓康(かんかう)独往(とくわう)の栖(すみか)。
花薬(くわやく)旧(ふる)きがごとし。
范蠡(はんれい)扁舟(へんしう)の泊(とまり)。
煙波(えんぱ)惟(こ)れ新たなり。
韓康は独り山に棲んで薬を採ったという。
今はその跡もないが、薬草は昔に変わらず生えている。
范蠡は小舟に乗って五湖に浮かんだという。
今はその泊まりも定かではないが、細かな波はいつも新たに見える。
23.1.9 東京都清瀬市金山調節池
山復山 何工削成青巌之形
水復水 誰家染出碧澗之色
『和漢朗詠集』506
山復(ま)た山。何(いづ)れの工(たくみ)か青巌(せいがん)の
形を削(けづ)り成(な)せる。
水復(ま)た水。誰(た)れが家にか碧澗(へきかん)の色(いろ)を
染め出(い)だせる。
山々が重なり連なって、青々と岩の嶺がそびえている。あの山の姿は
どのような名工が削って造りだしたのだろう。
深く湛えられた水が、碧に澄んだ淵をなしている。この色はどのような
優れた染色家が染め出したのだろう。
23.1.11 埼玉県所沢市狭山湖