比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展

2018年11月20日

11月17日(土)、長野県の佐久市立近代美術館で「比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展」が始まりました。

 

真っ青な秋空の下、お陽さまの光があふれる美しい日。授賞式があるので、全国からたくさんの方が集まりました。沖縄からは先生と生徒さん、そして特選をとった台湾のお友達も駆けつけてくださいました。

 

この展覧会には近代美術館の全展示室が使われています。ここは一階に展示された天来門流の作品。直門より一世代後の作家の作品が並びます。右のガラスケースには、田宮文平先生からお借りした『学書筌蹄』と『天来古法帖選』が展示されています。

 

全館を使っているにもかかわらず、全国からたくさんの応募があったので、所狭しと作品が展示されています。多彩で見ごたえのある作品が並びます。

 

まずは、小学生の天来賞。小学校1年生から4年生まで。小中学校は、先生が書いた臨書をお手本にした臨書作品が多くなってしまうのですが、これは違いますね。子どもの目で見た古典の息吹が感じられます。すごい!

 

こちらは小学校五年生から中学校三年生まで。うーん、うまい! 大人になっても続けてほしいですね。

 

高校生の天来賞です。力強くて堂々とした立派な臨書作品。原本の趣が見事に活かされています。

 

そして一般部の天来賞。文字のサイズや趣の異なった作品が選ばれました。

中央の「枯樹賦」を書いた方が、フェイスブックに書いていらっしゃるので、ご紹介しましょう。こちらです。枯樹賦は独学で勉強しているそう。こんなふうに、大きな団体に属していない若い方が最高賞に選ばれるなんて、ほかの公募展では考えられないことです。

特別賞を受賞した漢字と仮名の作品は、追ってホームページでご紹介しますので、少々お待ち下さい。

 

表彰式のあと、佐久市長と審査員による席上揮毫が披露されました。

 

最初は佐久市長の柳田清二さん。「好退者」を書きたいというリクエストがあったので、師匠である高橋蒼石先生が、張遷碑と熹平石経から文字を集めてお手本を作りました。隷書の特徴である蔵鋒と波磔に初挑戦。ゆっくりと、心を込めて筆を運びます。

 

完成しました。リズムを排除した素朴で深い線と暖かい味わいが生まれています。いいですねえ♡

市長さんなのに「退く」なんていう漢字を選んでいいのか? とみなさん不安を持ったと思いますが、ご心配はご無用。

「人を挙(あ)ぐるには すべからく退を好む者は挙ぐべし」

宋代の張詠という人のことばで、人を登用するときは、退くことを好む人を選びなさい。でしゃばりな人より控えめな人。役目についた後、いつまでも惰性的に居座り続けることのない人。そういう人がよい、ということだそうです。

 

続いて仮名の先生です。

かな作家協会理事長の慶徳紀子先生は継色紙。原本にあわせて青とクリーム色の美しい染め紙に書いてくださいました。きりっとした、強くて簡素な響きが感じられる作品です。

 

あきつ会理事長の河村和子先生は香紙切。二行にのびのびと、原本の繊細で自由な趣を再現してくださいました。かすれの美しい臨書です。

 

市長さんを指導した高橋蒼石先生(書宗院理事長)は離洛帖と李嶠詩。キリッとした楷書を得意となさるイメージですが、強い筆力に裏付けられた線の変化が見事でした。

 

謙真書道会常任理事の有岡しゅん崖先生は、15年(たぶん)ほど前にビデオにご出演いただきました。今回は爨宝子碑と祭姪文稿の臨書、それから詩文書です。力強く雄大な作品でした。詩文書はピカソのことばで「女性は日々鏡に少しだけ若い自分を描いている」。なるほどなるほど。

 

最後は創玄書道会会長の石飛博光先生。いつも楽しく盛り上げてくださいます。今回は張遷碑と争坐位帖の臨書。リズミカルで生き生きとした、かすれの美しい作品です。詩文書は一茶の俳句で「かたつぶりそろそろ登れ富士の山」。全紙を三枚継いだ大画面いっぱいに、おおらかな線で書いてくださいました。

 

左から有岡しゅん崖先生、佐久市長柳田清二さん、慶徳紀子先生、河村和子先生、そして右の二点は高橋蒼石先生です。

 

右は有岡しゅん崖先生、そして石飛先生。あらら、詩文書の作品が見えない。

 

有岡先生の作品・・・なのですが、紙が巻いてあったので、左右の下がまくれてしまっている。す、すみません。この写真しかないのです。

 

石飛先生の詩文書の紙は折ってあったのでちゃんと写せました。

 

この日は祝賀会の後、「かすがの森」というホテルへ移動して二次会。いろいろな方のお話が聞けて、充実したひとときでした。

翌日の「天来祭り」と「書宗院選抜展」の模様は次回にご紹介します。少々お待ちを。

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書道