龍門造像記

2018年2月6日

 

中国河南省洛陽市に「龍門石窟」があります。北魏の孝文帝が洛陽に遷都した太和18年(494)から開削が始まり、洞窟は2100以上、造像は10万尊余り、碑刻題記は3600種あまりに及びます(『書の旅55』参照)。

上は、伊河という川の対岸から見た写真です。中央に見える盧遮那仏の高さは17.14メートル、左右にたくさんの洞窟が見えますが、左下の四角の部分が有名な「古陽洞」で、「龍門二十品」の中の19品がここに刻されています。

 

古陽洞の入り口付近のちょっと高い部分に刻されているのが、あの有名な「始平公造像記」。石碑はほとんどが「陰刻(文字がへこんでいる)」ですが、「始平公造像記」は「陽刻(文字がでっぱっている)」です。

 

始平公造像記

始平公造像記(シリーズ・書の古典)

どっしりと厚みがあって、しかも鋭い線と形。とても魅力的な書ですが、文字のまわりが黒いですね。「習いにくいっ(怒)」なんて言わないでください。これは、古い拓本であることの証拠なんです。

 

始平公造像記

始平公造像記拓本の新旧比較

一番上が、今回「シリーズ・書の古典」に掲載した拓本です。右の「烏」字、上の拓本は下部の点が4つありますが、下の拓本では1つと欠けた点しか見えません。つまり、一番上がもっとも古い拓本なんです。

 

牛橛造像記

牛橛造像記(シリーズ・書の古典)

龍門造像記の中で、もっとも人気のあるのがこの「牛橛造像記」。石面があまり痛んでいないので、点画がよくわかります。気迫に満ちた線と引き締まった字形は、とても魅力的です。

右ページ三行三字目の「託」、左ページ三行一字目の「処」は、現在の楷書と異なり、右に点がありますね。これは「異体字」といって、この時代の楷書独特のものです。

 

桑原翠邦臨書

桑原翠邦先生臨書

上の二つを、桑原翠邦先生が半紙に臨書なさったものです。原本の筆勢がよりリアルに再現されています。

 

龍門造像記 臨書

桑原翠邦先生臨書

臨書の条幅作品です。桑原翠邦先生独自の解釈が加えられています。左の二つは「鄭長猷造像記」。

 

鄭長猷造像記

鄭長猷造像記(シリーズ・書の古典)

本書の編者、中村伸夫先生の解説には

この造像記には、他に類例のない字形が目立ち、あるいは誤字かと思われる文字も含まれているが、造形と運筆における強烈な野生味が特色となっており、肩をいからせた、かたくなな書法は、この書を愛好する者の心を強くつかんではなさない。

とあります。まさに言い得て妙!

 

最後にもう一つ

比丘道匠造像記

比丘道匠造像記(シリーズ・書の古典)

これはまた雰囲気が違いますね。中村伸夫先生の解説を見てみましょう。

字形においては安定感を欠く文字も少なくないが、大胆な鋭い打ち込みと、躍動性に富む伸びやかな運筆に特色があり、独特の趣きを持つ書風である。

さすが! すばらしい表現です。龍門造像記に対する先生の情熱が感じられます。

で、この臨書はというと

比丘道匠造像記 上田桑鳩臨書

上田桑鳩先生臨・比丘道匠造像記

これは上田桑鳩先生が、折帖を墨で真っ黒に塗りつぶし、その上に朱墨で書いた「比丘道匠造像記」の臨書です。すごい迫力ですね。

 

魅力に富み、大きな芸術的な展開を秘めた龍門造像記の世界。たくさんの方にチャレンジしていただきたいと願っています。

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書道