雁塔聖教序(がんとうしょうぎょうじょ)

2017年8月5日

『西遊記』のモデルとして名高い玄奘三蔵は、インドから仏典を持ち帰り、これを漢訳しました。その功績に対して、唐太宗と皇太子(後の高宗)がそれぞれ序文と序記を作り、初唐三大家の一人、褚遂良が書いたのが「雁塔聖教序」(653年)です。

唐の張懐瓘は、美人のようにあでやかであるといい、また金や玉のような美しさにたとえられます。字形は美しいだけではなく豊かな包容力と広がりを持ち、針金のように細い線は勁く、弾力があり、また太細の変化を極めています。昨今の臨書展でも人気の古典です。

 

比田井天来遺愛の袖珍本「雁塔聖教序」

比田井天来は大正2年頃から剛毛筆による用筆法の研究を始め、やがて松田南溟とともに新しい筆法を発見しましたが、その端緒になったのが「雁塔聖教序」です。手島右卿先生は昭和16年に「往年天来翁、鎌倉に蟄居して古法の探求に没頭せられたとき、全霊を打ち込まれたのが実にこの原帖であって、鮮明なるこの帖の筆意は、翁を駆って遂に古人用筆法の大発見をなさしめたのである」と書いていらっしゃいますが、上がその拓本です。「蝉翼拓(せんよくたく)」と呼ばれる淡い色の精拓で、共同研究者である松田南溟が自ら剪装しました。1ページに8文字はいった袖珍本(しゅうちんぼん・袖の中に入れられるほどの小型の本)です。

さてさて、上の拓本には朱と金で点が打ってありますね。これは天来と南溟が書いたもので、なにやら意味深です。昭和46年に比田井南谷が複製したとき「普及本(モノクロ)を買って特製本(金と朱の点は手描き)を借り、自分で金と朱の点を書いたんだよ」とおっしゃった方がいらっしゃいましたっけ。

さてさてさて、このたび発行の「シリーズ・書の古典」『雁塔聖教序』は、この本を複製したものです。モノクロなので、金と朱の点はありませんが、なんとか痕跡だけでも残したい。

左が「シリーズ・書の古典」、右上はテキストシリーズ、右下は原本。

いかがでしょうか。右上のテキストシリーズでは見えなかった朱の圏点がわかると思います。日々レタッチ技術の研鑽につとめた結果です(涙・涙)。というか、前は印刷会社にお願いするしかなかったレタッチを、自社のパソコンでできるようになった♪ のが、すごいですよね!

ついでに、新刊「雁塔聖教序」を少し宣伝しちゃうと(一生懸命作ったんですもん)

 

現代語訳

 

正しい筆順で書きましょう

 

かっこいい作品にできる部分を紹介

骨書が増えただけではなく、このような親切な編集になっております。

 

最後に、天来の臨書もご紹介しましょう。

大正10年(50歳)から刊行が開始された古典全臨集『学書筌蹄』です。写実的ですね。

こちらは昭和5年(59歳)の『天来習作帖』。のびやかな臨書です。

 

第4回「比田井天来・小琴顕彰 佐久全国臨書展」の天来賞に、雁塔聖教序の臨書がありました。審査員の有岡しゅん崖賞がついた、美しい臨書でした。今年はどんな作品が選ばれるのでしょうね。

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書道