2009年5月18日

端渓(たんけい)の紋様

3老坑硯板s.jpg
世の中の筆墨硯紙の本に必ずでてくるものについて、まだ触れていませんでしたね。
それは、硯の紋様です。



硯を愛玩する人は、紋様について、とってもうるさいですね。めんどくさいなーと思っていました、この本を作る前は。
でも、今、硯の最高峰とされる「端渓老坑(たんけいろうこう)」は、昔と比べるととっても廉価になって、小型のものだと一万円台で買えます。すり心地のよさは抜群ですから、一つもっていてもいいかもしれませんよ。老坑は今では採掘されていないので、買うなら今です。
さて、中国の硯の中で紋様がでるのは、端渓(たんけい)硯と歙州(きゅうじゅう)硯。今回は、「端渓の紋様」入門編です。

老坑硯板.jpgこれは、端渓老坑の硯板(けんばん)です。うみを彫らず、平らなのは、あまりにも紋様が美しいので彫刻をするのにしのびないからです。でも、淡墨を作るなど、少量の墨をするのに適しています。しかもこれは天地40センチもあります。こんなに大きいものは珍しいですね。
火捺(かなつ)、氷裂紋(ひょうれつもん)、天青(てんせい)があります。これではよくみえませんが、青花(せいか)という紋様もあります。

では、一般に販売されている硯によく見られる紋様を紹介します。

端渓紋様 青花.jpg微妙でわかりにくいかもしれませんが、「青花(せいか)」です。青花は硯の精華なり、といわれますが、青花のある硯はきめこまかでうるおいがあり、実用と鑑賞を兼ね備えています。

端渓の紋様1.jpg左は氷裂紋(ひょうれつもん)。氷がひび割れたような紋様です。
真ん中は魚脳凍(ぎょのうとう)。魚の脳が凍ったなんてすごい名前ですが、白や黄色のはっきりとした一塊の紋です。
右はさらにすごい魚脳砕凍(ぎょのうすいとう)。くだけちゃったわけです。
これらはすべて、鑑賞と実用に優れています。
ところが

端渓紋様2.jpgこれらの紋様がでていると、鑑賞にはよいのですが、墨をすっているときに障害が出ることが多いのです。
左は金線。文字通り金色の線です。銀色なら銀線、白は白線や鉄線といって、墨をすっていると、ここでひっかかるような感じがします。
真ん中は火捺(かなつ)。赤紫や青紫の斑紋です。右の赤い紋は朱瑳釘(しゅさてい)。赤く硬い斑点で、ともに磨墨には不向きです。

これらの基礎知識をやさしく解説した「筆墨硯紙事典」は、本日、取次にはいりました。大型書店には、間もなく並びます。


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