2009年2月10日

硯の鋒芒

坑仔岩s.gif
硯はなぜ墨を磨ることができるのでしょう。それは、石の表面に「鋒芒(ほうぼう)」と呼ばれる微細な凹凸があるからです。この鋒芒は、どんな形をしているのでしょう。
電子顕微鏡でしか見えないミクロの世界へご案内しましょう。

どんな石でも硯にできるわけではありません。それどころか、硯の石は、とてつもない山奥やとっても不便な場所からしか採れません。

端渓図2.gif硯の中で、一番有名なのは端渓硯(たんけいけん)。石は、羚羊峡(れいようきょう)を挟んだ両岸と、さらに山を登っていったところから採れます。そのいろいろな坑(こう)を示したのが上の図です。
オレンジ色で囲った左側が、もっともよい石が採れる「老坑(ろうこう)」で、その次によい石が採れるのが、右の「坑仔岩(こうしがん)」です。
坑仔岩.gifこれが、坑仔岩(こうしがん)の硯です。左上に紋様が見えますね。そして、この表面には、鋒芒(ほうぼう)があるのです。
鋒芒ってどんな形をしているんでしょう。昔は「のこぎり」や「おろしがね」のようだといわれていました。でも、そんな風に規則的な凸凹が石の表面にあるなんて、へん。
では、いよいよ拡大してみましょう。まずはマイクロスコープを使います。

抗子岩マイクロ.gifいろんな色の粒が見えますね。これが鋒芒の正体です。
マイクロスコープでは、これが拡大の限界です。次に走査式電子顕微鏡で見てみましょう。モノクロですが、もっと拡大できますよ。

009-250倍 坑仔.gif250倍です。(といっても、モニタによって違うのですが、便宜的にこう書きます)
なんだか表面が凸凹してますね。でも、のこぎりじゃないみたい。
さらに拡大します。

009-2000倍 坑仔.gifあらら、何かひだみたいになってますね。
実は、この石には石英や長石などの硬い石の粒が混ざっていて、その硬い粒に当たることによって、墨が磨れるんです。
もっと拡大してみると
009-T6000倍 坑仔.gif
おもしろいですねー。石の表面がこんな風になっているなんて! 不思議な石です。

ついでに、鋒芒と墨の粒子のサイズは、どれくらい違うのでしょう。

009-T20000倍 鋒鋩と墨粒子.gif下にある白いものが鋒芒で、無数の粒が墨の粒子です。ずいぶん違うものですね。

詳しくは、現在製作中の「筆墨硯紙事典」でご覧下さい。一緒にDVD化されるDVD筆墨硯紙のすべて「硯を極める」でも映像が見られますよ。

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