2008年7月15日

蘭亭序・神龍半印本

今日から江戸東京博物館で北京故宮書の名宝展が開催されていますね。
その目玉が「王羲之蘭亭序・神龍半印本」です。これはもちろん名品ですし、私も見に行きますが、これ、蘭亭序の最高のものとは言えないってご存知ですか?
そもそも王羲之が書いた「蘭亭序」のホンモノは現存しません。王羲之が大好きだった唐太宗が、自分のお墓に入れちゃったんです。名品のほまれ高い「蘭亭序」ですから、太宗が死ぬ前に、いろんな人が模写をしたり、臨書したり、それをまた木や石に彫ったりしました。それが今に伝わっているのです。

定武本.jpg昔から有名なのはこの「定武本」です。太宗が多くの名人に作らせた臨書のうちで、欧陽詢のものが一番真に迫っていたので、これを石に彫らせましたが、それがこの「定武本」だと言われています。とはいえ、「定武本」という名前がついたものは数知れず、どれがホンモノかケンケンガクガク。でもこの拓本、ちょっと堅苦しく見えるという人もいますが、上品な味がありますね。

そして今回の神龍半印本はというと
墨跡2種キャプション付き.jpg
有名な模本を二種類並べました。右が今回の「神龍半印本」です。
左が「張金界奴本」と呼ばれるもので、臨書ではなく、忠実な複製本ではないかと言われています。西川寧先生の「張金界奴本について」という、精密な論考があります。ただ、現存のものは相当傷んでいて、後から筆で書いちゃった部分もあるんです。
じゃあ、どーしたらいいかと言うと
刻本2種キャプション付き.jpg石に彫って拓本をとったものがあるんです。左は「余清斎帖」という法帖に入っているものです。臨書手本としては、これか、「秋碧堂帖」のものが最適です。
天来書院テキストシリーズでは、筆路がよく見えるので、神龍半印本を掲載していますが、その後に「余清斎帖」の「張金界奴本」の拓本もありますので、ぜひこっちで習ってみてください。
で、神龍半印本はというと、比田井南谷著「中国書道史事典」では、長鋒筆で書かれているので、だいぶ後世の臨書だとあります。唐蘭という人は、刻本は南宋末頃の偽刻とまで言っているらしい。しかも、模本が刻本の原本であるか、さらに後世のものであるかは、意見のわかれるところなんですって。


せっかく臨書をするなら、できるだけ書かれた当時の筆跡に近いものを選びましょう。

臨書に挑戦!(田村南海子ブログ)    

営業部からの便り(橋爪ますみ・佐藤貞男)

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