2008年5月30日

中林梧竹の書 80歳以降に注目!

中林梧竹というと、みなさんはどんな書を思い浮かべますか? 昨年、日野俊顕先生の『中林梧竹の書』を発行するまで、六朝書道が中心なんだと思っていました。あるいは、風変わりな金文の臨書も目立ちますね。

でも、本の中にもっとすばらしい作品があるし、五島美術館の展覧会を見て、晩年の書はすごいなーと思うようになりました。そして、今回新潟の梧竹展を見、日野先生のお話を聞いて、その確信を強めたのです。

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これは梧竹57歳のとき、北京留学中に書いた小品です。いわゆる「六朝書道」といわれるものだと思います。この頃の梧竹は中国の書に夢中だったそうですが、そういわれてみるとこの作品、鄭板橋や何紹基たちの書と共通点がありますね。

「王羲之を模す」とありますが、この時期の臨書はどうだったのでしょう。

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ちょっと後になりますが、65歳のときの十七帖の臨書です。いかにも梧竹という感じの、個性的な臨書です。

でもね、80歳を過ぎるとぜんぜん変わってしまうんですよ。

 
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85歳の時の、王羲之「朱処仁帖」の臨書です。美しいですね。20年前の臨書はちょっと不自然で「見せる」意識が強く感じられるのに対して、これはなんて自然なんでしょう。これこそが、梧竹の本当のすごさなんだと思います。

 
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今回の展示の中に、87歳の作品がありました。ライティングができなかったので画質が悪いのですが、それでも作品の価値はわかると思います。右に左に傾き、自由自在な表情にあふれた最晩年の作品。みとれてしまいます。

金文の臨書も、60歳と80歳はまったく違っています。梧竹は拓本ではなく、石印本を見て臨書しているのでちょっと違和感があるのですが、80歳を過ぎると、独特の風格が出るのです。

 
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すごいですね、このどっしりとした力強い明るさ。

そもそも、六朝書道っておかしな言い方ですよね。この言い方が梧竹の評価を誤解させているような気がします。

来年2月、徳島県立文学書道館で、私が講演をさせていただくことになりました。今までの偏見を払拭するお話をしたいと思います(ほんとかな)ので、ぜひ聞きにきてくださいね。

 

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