元旦自詠詩扇面

賀.jpg明けましておめでとうございます。ブログ「中林梧竹の書」を今年もよろしく。

 

新春の扇面は「庚戌元旦」の自詠詩です。庚戌は明治43年、西暦1910年、ちょうど今から100年前の作、桜雲洞本野氏の蔵品です。

扇面.jpg

庚戌元旦             庚戌(かのえ・いぬ)元旦                  
賀酌新年酒                   賀して酌む 新年の酒      
酔顔似小童                   酔顔 小童に似たり        
佳時身也健                   佳時 身また健なり            
八十四春風                   八十四春風                 
                                                          

新年を祝って屠蘇酒を酌む。私の酔った顔は子供のよう。 
佳い時節に、身体も健康。風もめでたい八十四歳の青春。

梧竹の書といえば、モダンな現代風というイメージがありますが、梧竹が生まれたのは文久10年、西暦で1827年。良寛や貫名菘翁が活躍していました。小林一茶やベートーベンはこの年に亡くなっています。黒船の来航は梧竹27歳の年です。

梧竹は書の近・現代に繋がる道をを大きく切りひらき、時代をこえた「百代の新風」を打ち立てました。「私が今書いている書は今の人にはわからぬ、百年後になれば理解されるだろう」とコメントを残した話は有名です。

梧竹が亡くなったのは大正2年、西暦1913年、それから数えて今年は97年。平成25年が没後百年となります。人類の到達し得た美の頂点につらなる梧竹書芸術の偉大さが、いよいよ広くいよいよ深く認識されることを私たちは願っています。


この扇面、上部の文字を大きく書いています。拾い読みすると「賀年、顔童、身八十、春風」。これだけでも新年のごあいさつを読みとれます。これを上部の大字ブロックとみると、少し間隔をおいて小さい字の「酌新、酒酔、似小、佳時、也健、四」が下部の小字ブロック。あと落款が「庚戌元旦、梧竹」。上部が広く下部が狭い扇面の形状を巧みに活かし、仮名の散らし書き風のイメージを取り入れて、3つのブロックで組み立てた面白い画面構成です。

同じカテゴリの記事一覧

ブログ内検索