2009年10月15日
奉呈悟由禅師 −−追補1
天来書院スタッフの都合があって、先週は1日繰り上げのon site となった。ディスプレイに画面が大きく写し出されて、スクロールしながら見て驚いた。前もって執筆した解説ではふれなかったこの書の姿が、くっきりと映し出されるのに目を見張ったのだ。
スクロールで映し出されたこの書の別の姿は、you tubeの動画にでもして動感を再現したいところだが、今はコマ落としの3コマで我慢しよう。
まず驚いたのは、このシーンだった。左上から吹き下ろす一陣の烈風。
下へ下へとスクロールしていくと、なんとこの寒風が画面全体に吹きすさんでいるのだ。
いや、よく見ていると、これは吹雪の絵なのだと気付いた。一つひとつの文字は一片ひとひらの雪。風にあふられ、虚空に舞い躍り、飛び散っている。
人の目は「僧」字の横「視心」にあって、吹雪の天空を見上げる。その光景は先週の「同心円・放射線章法」の図をご覧あれ。
改めて詩を読んでみよう。
武蔵野の風は寒く 雪は深い 70歳の禅師は やさしく訪ねてくださった
百錬の機鋒に 天魔も避け 騰六、飛廉の悪魔どもも 侵すことはできぬ
今日は2月18日 この日は風と雪
この書、ただ文字を書いたものではなかった。寒風に舞い散る雪を描写した一幅の絵であった。いや、まだそれだけではなかった。永平寺中興開山にして64世貫主、森田悟由禅師の風骨を描き写したものだった。ある種シュールレアリズム的表現といってもよいだろうか。これは「作品」などという甘いステージを通り越して、激しく闘わせる禪機応酬の図象であったのだ。
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