孝経12幅対(その3)----自然の形

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「孝経12幅物語りのつづきをもう少し」とリクエストをいただいた。調子にのってもう1くだり。



孝経12幅の書、点画(点や線)の1つ1つが、自然に生れたものの形をしている。たとえば子・母の横画、父の終画。ひもの両端をもちあげると、ひも自体の重みで垂れ下がった曲線、その上下を逆にした形だ。こしらえものの人工の曲線でなく、書の線というマニュアルから解放された、自然のどこにもみられる柔らかなたわみだ。

文字の姿、1幅の構成、12幅全体の情趣、どこにも無理なく、陽テンポの明るさで、観る者に癒しをほどこすゆとりを感じさせる。親孝行は、人だけでなく動物にもみられる情愛、強制されたものでなく生来的なもの。書は孝経にふさわしい表現といえるだろう。

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孝経最後.jpgこのように微調整的なデフォルメは、その文字自体が必要とする変化ではなく、上下左右、全体構成など、まとめていえば章法からの必要性によって生起したものだ。宇宙間の無数の星たちが、互いに引力のバランスを保って安定している感じから、このような章法の形態を万有引力章法と名付けている。


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