中林梧竹 なぜ80歳以降? その1

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なぜ「80歳以降に注目」なのか。

 

 

 

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梧竹の書は、バージョン・アップの連続だ。
ご自身のことばでは、「変わらなければ進歩はない」のだ。
何度かの大きなモデル・チェンジもある。

50歳、60歳、70歳、80歳の書を見比べてみよう。

まずは50歳ころの作、賈島の「尋隠者不遇」。
松下問童子 言師採薬去 只在此山中 雲深不知処
 松の木の下で童子に尋ねたら、
 「お師匠さまは薬草を採りに行かれました。
  この山中においでになるのはたしかですが、
 雲が深く立ちこめて その場所はわかりません」

まことに素直に書いているとみえるのだが、
詩の状景・情感の描写は完璧。そこに注目。 梧竹は後年、「あなた方は字を書くからいけない」といったことを深く味わいたい。

梧竹の書はこの時期、すでに一つの頂点にのぼっている。
この小幅は、広いお床に掛けても、
その空間をキリリと引き締めるほどの力をもっている。

師匠の米庵、香雪と比べてください。
幕末三筆にも引けをとることはない。
梧竹における唐様書の完成です。
見方をかえると、明清文人調さえもモノにしている。

余元眉が、清国初代長崎領事として明治11年に赴任したとき、
「日本にもこんな名人がいるのか」と驚いたのは
このような書だったのだ。

梧竹は 字を書こうとしているのか、
山中の状景や風懐を描こうとしているのか。
そのポイントさえ よく看ていただけたら、
なぜ80歳以降?の話をスルーしてもいいのですが。 

 

、 

 

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こうしてみると、この時期の梧竹に惹かれる人が意外に多いのもうなずけるような気がする。

 

小城市立中林梧竹記念館の梧竹展のおしらせ

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梧竹は熊本市の朝鮮飴本舗園田屋の主人園田郭六と親交があり、度々訪問滞在して多くの名作を残したが、その主要なものが熊本県立美術館に寄託されている。かつて「墨美」誌上に何点かが紹介されたことがあるが、今回は30点が公開される、まことに得難い貴重な機会である。お見逃しなく。

平成20年 12月4日(木)~ 平成21年 1月12日(火)
記念講演 12月6日14時 無塩(ブエン)の王羲之  日野俊顕 

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